H255.保健医療提供体制の充実について (1) 小児がん対策の推進について(知事、病院事業管理者、保健医療部長)

Q 菅原文仁議員(刷新の会)

 小児がんは、白血病、脳腫瘍のほか、神経芽腫をはじめとする胎児性腫瘍や肉腫などの固形腫瘍から構成される小児期に多いがんです。疾患の発症は、小児期のみならず、思春期、若年期、成人期にもわたります。発症される方は年間2千から2,500人と、成人がんと比較すると少数です。しかし、不慮の事故、先天性疾患と並び、子供の3大死因の一つと言われており、小児から若年成人の死亡原因疾患の第1位であります。
昨年6月に閣議決定された政府のがん対策推進基本計画によると、重点的に取り組む課題として、小児へのがん対策の充実が掲げられております。本県でも、小児がん対策を含めたがん対策推進計画案が策定され、今議会に行政報告がなされるところです。
そのような中、先月、県立小児医療センターが全国15カ所の小児がん治療拠点病院の一つとして指定されました。県民にとっても非常に良いニュースが飛び込んでまいりました。これは、現在の小児医療センターの症例の蓄積や高い機能、また実績はもちろんのこと、さいたま新都心8-1A街区に設置されるさいたま赤十字病院と小児医療センターの連携による機能強化、長期的なケア、またアクセスの良さといった将来性が評価されたものだと思います。このような良い流れを弾みにして移転する小児医療センターを、より高度な医療拠点にしていただくことを切に願っております。
そこで、知事にお伺いいたします。小児がん対策について、埼玉県は今後どのように取り組むのでしょうか。
次に、病院事業管理者にお伺いします。県立小児医療センターの移転に際しては、病床数が16増の316床になることで、小児がん治療機能の充実が求められていると考えております。今後は、専門的な病床の整備を検討してはいかがでしょうか。
次に、保健医療部長にお伺いいたします。小児がん特有の課題として、晩期障害の問題があります。晩期障害とは、がんの治療が終わった後に発生する生活と健康への悪影響のことです。抗がん剤や手術、放射線治療によって、さまざまな臓器に障害が生じるこの晩期障害対策は非常に重要だと思いますが、いかがでしょうか。また、患者は苦しい治療から精神的なダメージを受けたり、がんになったために生命保険に入りづらいなどの社会的な困難に遭遇することがあります。命は助かったけれど、後遺症で苦しむ可能性もあります。さらに、小児がんに罹患した子供を持つ家族には、様々な重い負担がかかります。こういったことに対するケアをどのようにお考えでしょうか。

A 上田清司 知事

 小児がん対策については、現在策定を進めています平成25年度からの埼玉県がん対策推進計画において重点的に取り組む課題として新たに位置付けております。
この計画では小児がんに対する専門的な医療の提供と相談支援体制の充実を図ることとしております。
まず、小児がんに対する専門的な医療の提供についてでございます。
本県では、従来から県立小児医療センターにおいて高度専門的な医療を提供してまいりました。
小児がんに関する多くの治療実績を持ち、白血病では全国第1位、脳腫瘍などでも全国有数の治療実績をもっております。
こうしたことが認められ、この2月に全国15カ所のひとつとして、国から小児がん拠点病院の指定を受けたところです。
県立小児医療センターのさいたま新都心への移転・整備に当たっては、小児がん治療のより一層の充実を図ることにしております。
また、小児がんに関する専門的な相談支援体制の充実を図ることは、患者が適切な医療を受けるために大変重要であります。
このため、県立小児医療センターを中心に専門医療に関する相談や家族の心理的負担の軽減などの生活に関する相談を受ける体制づくりを進めているところでございます。

A 名和 肇 病院事業管理者

 小児医療センターは白血病の診療実績が年間55例と全国1位であることが評価され、県内唯一の「小児がん拠点病院」の指定を受けました。
そこで、新病院の整備にあたっては、小児がん診療の充実を図ってまいります。
まず、白血病の患者さんは免疫力が低下しますので、感染予防を目的とした清潔度の高い病床を新たに整備いたします。
あわせて、重症な患者さんのための無菌室を現在の2床から大幅に増床する計画でございます。
また、16歳以上の小児がん患者さんについても積極的に治療に取り組むため、病床を確保する予定でございます。
さらに、新たな治療薬の開発などにつながる臨床研究機能も強化いたします。
今後も、小児がん拠点病院としての主導的役割をしっかりと果たしてまいります。

A 奥野 立 保健医療部長

 初めに、晩期障害対策についてでございます。
晩期障害は、放射線や抗がん剤治療に伴う合併症、疾患部の摘出によるやむを得ない機能障害、疾患に伴う二次的ながんの発症などがございます。
治療に当たっては、それぞれの効果とリスクを勘案して最適な治療が進められておりますが、こうした晩期障害を完全になくすことは難しい状況にございます。
晩期障害への対応としては、障害をできるだけ低く抑えること、またその状態を長期に保つことが必要です。
このため、晩期障害を早期に見つけ、状態に応じて適切に対応していくことが重要です。
県としては、小児がん拠点病院である県立小児医療センターを中心として、県内外の専門医療機関と、晩期障害の対応に関する情報の共有化を図ってまいります。
次に、患者本人や家族に対するケアについてでございます。
小児がん患者や家族からの相談内容は、医療費、本人、ご家族の心理的負担の軽減、保育や教育、福祉制度の利用についてなど多岐にわたっており、相談内容に適した機関へ迅速に繋いでいくことが重要です。

 県としては、相談に適切に対応するため、県立小児医療センターや、専門医療機関における相談機能の充実、強化に努めてまいります。