1.産業振興・雇用機会創出基金について

Q 菅原文仁議員(刷新の会)

埼玉県は、今年度から総額100億円の基金を原資として、次世代産業、先端産業に参入する県内企業へ集中的な支援を行います。2月定例会の冒頭で知事もおっしゃられたように、地方においてもこれまでの景気回復の良い流れに水を差すことなく、本格的な成長を促していくことが今年の最大の課題であり、アベノミクスを契機に生まれたデフレ脱却、景気回復を軌道に乗せることが極めて重要と考えます。この大型基金の活用から新産業が創出され、民間投資を喚起して雇用拡大につながっていくことで、景気の好循環が実現することを強く期待しております。 今月10日に私たち会派は愛知県に伺い、産業振興対策基金の活用事例を研究してまいりました。愛知県では大村知事の公約であった減税の代替措置として、毎年度50億円を産業空洞化対策減税基金として積み立て、先端産業の立地支援、成長分野の研究開発補助を行っております。
一つ目の産業立地補助金は2年間で91件の採択があり、補助見込額94億円、企業の総投資額は推計1,941億円余り、雇用維持創出効果は2万1千名余りとなったそうです。二つ目に、研究開発補助金は制度開始から3年で196件、累計22億円を交付し、平成24年度の対象事業で商品化や生産稼働につながったものが8件、試作品完成や開発技術の実証段階に進んだものが38件になるなど、成果も出てきたということです。産業構造も地域特性も異なる愛知県ですが、かなり大胆に工夫した支援で実績を挙げられていると実感してまいりました。
知事は、基金について、5年程度の期間で思い切って予算配分ができなかった分野に大きく踏み出し、今後はサービス産業や農業分野などでも成長が見込めれば活用するとも表明されました。私も、基金の活用が埼玉県の経済の起爆剤となるよう願っております。
そこで、知事に質問です。
一点目として、今後この基金を産業立地に活用し、地域の雇用につなげることや市町村との連携を図った事業を行うなど、地域に根付くような支援につなげるお考えはあるのでしょうか。知事の将来ビジョンをお聞かせください。
二点目として、基金の活用期間についてはなぜ5年なのかをお聞かせください。経済政策として地域経済の好循環につなげるならば、ある程度短期間で集中的に先端企業を軌道に乗せるようにしなければ、地域経済に循環するのが遅くなってしまうのではないかと思います。鉄は熱いうちに打てであります。この期間についての考え方をお聞かせください。
三点目として、雇用創出については、学生や若者を県内企業に正規雇用化する取組を行っていただいておりますが、我が国の将来を考える上でも、更に自立した若者や女性を増やすことが重要になると思います。この基金の活用で、雇用の分野では具体的にどのような事業に取り組み、どの水準を目指されるのか、御所見をお伺いします。

A 上田清司 知事

まず、「産業振興・雇用機会創出基金について」のお尋ねのうち、産業立地に活用する考えはあるかでございます。
平成17年に企業誘致大作戦を始めて以来、712件の企業を誘致しました。投資総額が約1兆430億円、新規雇用が約2万3千人を見込んでおります。
また、過去10年間の企業本社の転入超過数は1,324社で全国ダントツの1位でございます。
これらはワンストップ、クイック、オーダーメードサービスという本県独自の対応や立地特性を生かした形での誘致活動による成果であります。企業の方からは「埼玉は話が早い」、こういうことがよく聞こえてまいります。
企業誘致は引き続き、こうした方法で取り組んでまいります。
そのため基金は経済成長に不可欠なイノベーションに挑戦する芽を育むことに重点を置き、埼玉県の将来の可能性を大きく膨らませることを目指し県が主体的に取り組んでまいります。
製品開発、実用化が達成されれば、事業化、工場立地につながり、企業によるさらなる投資と新規雇用の拡大の効果が期待できます。
市町村との連携については、最先端のイノベーションを目指すこの基金の目的のもと、地域の特性に応じて必要な連携を図ってまいります。
次に、基金の活用期間についてでございます。
この基金は次世代産業の育成や雇用機会の拡大を図り、県内経済を確かな成長につなげる事業に集中的に使うものでございます。埼玉県では初年度となる平成26年度に先端産業創造プロジェクトの事業に約10億円を活用しています。愛知県の研究開発補助約8億円と遜色のないものだと考えています。
これはという案件が出てくれば、御指摘のとおり、5年というのは概ねということにしておりますので、別に2年でも3年でも構わないというふうに思っております。タイミングを見て必要性を見て有効に活用いたします。
次に、雇用創出についてでございますが、生産年齢人口が減少する中、経済の持続的な成長を図るためには若者や女性がその能力を最大限に発揮することが極めて重要でございます。
そのため、この基金を活用して介護・福祉・医療など成長分野の人材を育成するとともに、若年層や女性の雇用機会の拡大に図っていきたいと考えております。
まずは未就職や非正規の若者300人に県内企業3か月の現場実習を行い、正規就職に結びつける取組を今年度から新たに始めました。
また、少子高齢・人口減少社会に突入した我が国は少子化対策が急務でございます。
雇用が安定せず結婚や出産に踏み切れない若者や女性に、就業支援を通じて将来への不安を和らげることが必要でございますす。若者や女性が安定した職に就いて経済的な不安がなく、安心して子育てや仕事ができる社会、そうした全国をリードする新しい社会モデルの構築にも基金を活用していきたいと考えております。