H23 1.日本再生、埼玉イニシアティブについて 

(1) (第一戦略)24時間在宅介護サービスの展開について
(2) (第二戦略)エコタウンプロジェクトについて
(3) (第三戦略)割れ窓理論で貧困の連鎖をストップについて

Q 菅原文仁議員(刷新の会)

 先日、ある職員の方が言っておりました。「上田知事はアメリカンフットボールの名キャプテンですよ。まずキャプテンがちょうどいいところにボールを蹴って、そこに走った職員がキャッチし、パスを回し合い、トライするんですが、最近はチームも少数精鋭になってきてトライの精度が上がっています」ということです。知事就任から8年間で上田イズムは着実に浸透していると察した次第です。
知事は3期目の公約の中で、政策理念の「安心」「成長」「自立自尊」を掲げ、3つの基本戦略によるさまざまな政策を立案しております。その中から、3点お伺いします。
まず、「暮らしの安心を確立し、経済の活性化につなげる」第一戦略から、24時間在宅介護サービスの展開について。次に、「企業も県民もイノベーションの波を起こし、世界を舞台に成長する」第二戦略からエコタウンプロジェクトについて。また、「県民全員の力で自立自尊の埼玉をつくる」第三戦略から、割れ窓理論で貧困の連鎖をストップについて。
高齢化する県民の医療や在宅介護の安心生活の創造をどうされるのか、成長分野の再生可能エネルギーの地産地消を埼玉県としてどうされるのか、増え続ける貧困家庭の自立と教育支援をどうされるのか、それぞれが県民にとって大変重要なテーマであります。具体的な方向性、そして思いを知事にお伺いします。

A 上田清司 知事

 まず、「(1)(第一戦略)24時間在宅介護サービスの展開について」でございますが、全国一のスピードで高齢化が進む本県にとっては、県民の介護に対する不安を解消するために、特別養護老人ホームの整備を積極的に進めてきたところでございます。
その結果、待機者の数は約1万5千人と、東京都の約4万4千人、神奈川県の約2万3千人、千葉県の約1万7千人に比べれば、1都3県の中では最も少ない状況になっているのは事実であります。
ただ、一方では、介護が必要な人たちにとって、住み慣れた自宅で過ごしたいという、いわば介護と医療が一体となった、そういう仕組みを希望される方も多いことも事実だというふうに思っております。
そこで、今回の介護保険法改正によって、平成24年度から介護と看護が一体となった24時間の定期巡回・随時対応サービスが創設されます。
この新しいサービスの提供は、夜間も対応できる介護職員、看護師の確保、採算性などの課題もあります。しかし何とかこれを普及させねばならないだろうということは大事なことだと思っております。
本県でも、本年度後半から2市がモデル事業に取り組むことになっています。
まずは、この2市の事業立ち上げを、私たちとしては、成功するように支えて、全国的な先行事例の情報を提供しながら、しっかり事業の成果を見るという形をしていきたいと思います。
2市の検証をしっかり行って、その結果を踏まえて、どのような支援をすれば上手くいくのか、そして、各市町村の事業に対しても、先行事例を上手くお示ししながら協力をしていく。こんなことを今考えているところでございます。
また、現在、市町村においては平成24年度から3年間の介護保険事業計画の策定にも取り組んでいます。
このサービスについても適切に盛り込めるよう、各市町村個別にその実情に応じて助言していますが、今後も研修会を適時開催するなど継続して支援をしていきたいと思います。
いずれにしても、このサービスが、できるだけ早く全市町村に普及するように努めていきたいと考えているところです。
次に、「(2)(第二戦略)エコタウンプロジェクトについて」でございます。
エコタウンプロジェクトが目指すものは、エコタウンに導入した技術や仕組みの実証を通じてエネルギーの地産地消を具体的に進めるモデルを実現することです。
このプロジェクトは市町村レベルの実施を基本として、太陽光発電・LEDなどの再生可能エネルギーや省エネ設備の導入を進めて、蓄電池なども備わったスマートグリッドの整備を総合的に進めることでございます。
また、市町村単位のモデルに加えて、先進性、独自性がある場合には、市町村内の特定地域でもそうした取り組みも可能にしたいと思っております。
埼玉のエコタウンは先端技術の導入や、太陽光パネルを一気に普及させる取り組みなど、ハード・ソフト両面で埼玉らしさというものを工夫していきたいと考えています。
今回補正予算で提案しております「電力100パーセント自活住宅普及促進事業」は、4キロワット以上の太陽光発電設備の発電量と家庭の電気使用量とを比べて、電力が実際に自活できるかどうか、その割合がどのようになるかということをを検証しようとするものでございます。
住宅で、まずはエネルギーの地産地消を進めるための一つのモデルケースとなるものであり、この事業を通じてエコタウンの取り組みにつなげていこうと思っています。
「エコタウンプロジェクト事業推進調査」においては、先進的なエコタウン実現のために、市町村にはぜひ積極的な提案をお願いしたいと思っております。
エコタウンプロジェクトでは、省エネ・創エネの関連産業の成長が見込まれ、県内産業の振興ひいては日本を元気にすることにもつながると考えています。
このプロジェクトには困難な課題もありますが、困難な課題を解決しなければ日本の再生はあり得ないのではないかと思います。
次に、「(3)(第三戦略) 割れ窓理論で貧困の連鎖をストップについて」であります。
ご承知のとおり、ニューヨーク市の前市長のジュリアー二氏が割れ窓理論というものを指摘し、軽佻(けいちょう)な犯罪でも見逃していればそれが凶悪犯につながる、逆に軽佻(けいちょう)な問題を丁寧に扱えば、重要な問題も解決するという、こういう考え方でありますが、その理論を貧困問題に応用した場合、どうなるだろうというのが、私たちの試みであります。
生活に困窮した方に早い段階で支援を行って、貧困の連鎖を食い止めようじゃないか、特に、昨年の9月から職業訓練、住宅確保、教育支援の3つの柱で保護受給者の自立を強力に支援する「生活保護受給者チャレンジ支援事業」を開始しました。
特に、保護世帯の高校進学率が低いこと、このことが、また、その子供たちが成長したときに、力のない、ある意味では生活力のない大人に成長して、さらにまた、生活保護に陥っていくという、こういう、負の連鎖を断ち切ろうということで仕掛けたものでございますが、保護世帯の中学生を対象とした学習教室を県内全域10カ所の老人福祉施設に設置して、学生ボランティアによるマンツーマンでの学習指導を行いました。
その結果、平成22年度に教室に参加した中学生の高校進学率は97.5パーセントとなって、前年度に比べて10ポイント向上しておりますので、明らかに効果があったと、このように思います。
この取り組みは全国的にも注目されておりまして、国自身も本県の取り組みを高く評価して全国の自治体に広げようというような仕組みを考えているようであります。
県としても、政令市のさいたま市をはじめ有力な市などに呼び掛けて、同じことをやらないかということを積極的に働き掛けたい、このように思っています。
今後も、保護世帯の自立支援を強力に進め、失敗してもやり直しができ、本来、学んで、しっかり働く、健康で文化的な生活を取り戻す、そういうことに力を入れていきたいと考えています。