H255.保健医療提供体制の充実について (3) 総合的な地域リハビリテーション支援体制の構築について(福祉部長、保健医療部長)

Q 菅原文仁議員(刷新の会)

 リハビリテーションとは、脳卒中やけがなどで失った機能を、本来あった機能への回復を目指して訓練するなどの一連の行為であります。寝たきりなどの発生を可能な限り予防する予防的リハビリテーション、障害が発症すれば早期に開始される急性期、そして回復期リハビリテーション、寝たきりなどの進行を阻止する維持期リハビリテーションといったものがあります。
多くの先進的な自治体では、地域の保健、医療、福祉の連携の中で均衡あるリハビリテーション医療体制が作られることを目的として、地域リハビリテーションの支援体制が構築されております。例えば、埼玉県同様に急速に高齢化が進む千葉県では、県と市町村、医療機関の連携、及び医療保険と介護保険それぞれの適用範囲のリハビリテーションの円滑な連携を図る取組が行われております。中核となる地域リハビリテーション広域支援センターを2次保健医療圏ごとにおおむね1カ所指定し、人的支援、リハビリテーション技術の研修や関係機関との連絡調整、さらにはリハビリ資源の情報収集や発信などを行うことによる地域リハビリテーション支援体制の整備が図られております。
一方で埼玉県は、保健医療計画案において、障害の重度化を防ぐために、急性期、回復期、維持期の切れ目のないリハビリテーション医療は重要だとして課題の認識はあるものの、医療圏ごとの中核的なリハビリテーション医療の拠点もありません。また、連携体制もない状況であります。私が調べたところによりますと、関東では埼玉県と栃木県が遅れをとっている状況です。今後、日本一のスピードで埼玉県は高齢者数が増加してまいります。このままでは、地域によってはリハビリテーション医療を受けることができないところも出てきます。また、専門職であるOT、PT、STが確保できない医療機関も発生していきます。さらに、離れたところに治療に行かなければならない患者も増えてまいります。このように様々な不都合が生じてしまうと私は危惧しております。医療機関や市町村では、このようなことに対処することはできません。こういった地域医療の体制整備こそ、県の責任で行うべきと考えます。住み慣れた地域において、生涯にわたって生き生きと生活を送ることができるよう、また一日も早く社会復帰できるよう、地域リハビリテーション支援体制の構築をぜひ推進していただきたいと思います。
そこで、福祉部長にお伺いします。埼玉県のリハビリテーションの現状と今後の課題、そして理学療法士、作業療法士、言語聴覚士といった専門職の確保や質の向上への取組を含めた支援体制の構築について、どのように考えているでしょうか。
次に、保健医療部長にお伺いします。急性期から回復期への移行が円滑にできるよう、リハビリテーション医療の充実を図るべきと考えますがいかがでしょうか、お伺いをいたします。

A 荒井幸弘 福祉部長

 まず、県のリハビリテーションの現状と今後の課題についてでございます。
県では、平成12年度に、国の補助事業において、総合リハビリテーションセンターを埼玉県の中核支援センターに指定し、関係機関等に対し、支援協力を行ってまいりました。
総合リハビリテーションセンターは、この事業終了後も、専任の理学療法士や作業療法士、保健師等でチームを組み、地域に派遣して、会議や研修等の企画、運営の支援を行ってまいりました。
しかし、現在の総合リハビリテーションセンターは、中核的な支援機関としての位置付けや関係機関の役割が明確ではない現状は、組織的な体制とはいえないのではないかということが課題と認識しております。
次に、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士等の確保や質の向上への取り組みを含めた支援体制の構築についてでございます。
まず、専門職員の確保についてでございます。
埼玉県立大学においては、平成11年度の開学以来、平成23年度までに理学療法学科、作業療法学科合わせて536人の卒業生を輩出してきました。
また、国立リハビリテーションセンターや県内の民間養成施設における理学療法士などの総入学定員は、平成14年度の300人から平成24年度には780人と2.6倍に枠を拡大し専門職員の養成を行っております。
次に、専門職員の質の向上についてでございます。
総合リハビリテーションセンターがその機能を生かし、専門職員向けの研修や実習生の受け入れを行うなど、質の向上を支援しております。
さらに、現在、センターの職員が県内の理学療法士会、作業療法士会、言語聴覚士会の会長を務めており、総合リハビリテーションセンターが県内の専門職員の連携において大きな役割を果たしております。
今後も、総合リハビリテーションセンターが中心となって、専門職員の人材確保と質の向上も含め、地域リハビリテーションの支援体制が構築できるよう努めてまいります。

A 奥野 立 保健医療部長

 脳卒中や骨折などの急性期の治療を終え、病状が安定した時期に集中的にリハビリを行うため、回復期リハビリテーションがあります。
この回復期リハビリテーションを専門的に行う病床数は、本年1月現在で県内に2,692床ございますが、人口10万当たりでは37床と全国平均の51床を下回っております。
回復期リハビリテーションの機能を強化することは、急性期から在宅までの医療連携体制を構築する上でも不可欠であると考えております。
このため、現在御審議をお願いしております第6次地域保健医療計画でも、回復期リハビリテーションを計画期間中重点的に整備していく医療機能の1つとして位置付けております。
また、がんや脳卒中、心筋梗塞など疾患ごとに、入院から退院後の通院治療までを通した患者さん個々の診療計画となる地域連携クリティカルパスの導入を進め、急性期と回復期の病院間の連携を促してまいります。

 県といたしましては、高齢化に伴い増加が見込まれる医療需要に対応できるよう、リハビリテーション医療体制の充実に取り組んでまいります。