一般質問 全国最下位の医師不足解消の取り組みについて

すがわらの質問・提言
埼玉県の人口10万人当たりの医療従事者の数は139.9人(対人口比で全国最下位)です、また極端な医師の地域偏在は特に課題になっております。
 全国平均の人口当たりの医師数に比較して、従事者数で見ても、ほぼ無医村の東秩父村はじめ、10分の1以下、4分の1程度の自治体が数多くあります。

 そこで、県内に医大を増やす事が出来れば、医師は増加するはずです。それを実証できるかどうか、人口10万人当たりの医学部の定員数をX軸に置きまして、Y軸には人口10万人当たりの医師数、医学部定員と医師数を調べて、相関関係があるか考察しました。

 この2つの相関を見ますと、0.354という相関係数が導かれます。私は無視できない相関が導かれたと思っております。埼玉県は医学部の定員が一番少なく、医師数が一番少ないので、左の一番下に位置しております。仮に下位5県で相関係数を導きますと、さらに数値は上がります。つまり、県内に医学生を増やせば医師が増えるという、ある程度の相関が認められるのではないでしょうか。他にも、埼玉県は医師の地元高校出身率10.8%と全国の平均の3分の1程度です。これも医師の定着を阻害する要因になっています。
 さて、そこで私は短期、中期、そして長期の3つの提案をいたします。
 まず、短期的な「作戦」として、医師の働く環境を徹底的に良くすることです。
勤務医の労働環境は大変劣悪であり、埼玉県医師会の調査では週59時間以上働く勤務医が40%以上もおり、勤務医は当直もあり、過酷な労働です。勤務医が働く環境をさらに改善して、埼玉で医療をやりたいと思える環境づくりを徹底すべきだと思います。さらに、医師が働きたいと思うような、意欲をかき立てるような高度かつ専門的な医療を導入することも重要です。
 次に、中期的な「戦術」として、県外地域の医大に地域枠を拡大することです。地域枠とは、地域医療を担う医師を確保するために医大に特別な定員枠を設ける制度のことですが、現在埼玉県の地域枠は、県内唯一の医大である埼玉医大の10名だけです。 これを県外の大学にお願いして特別地域枠を設定してはいかがでしょうか。つまり医学生を外から獲得するということです。
例えば、東京医科歯科大学は長野県に2人、茨城県に2人特別地域枠を設定しております。茨城県は、平成24年度に県内9名の地域枠以外に、県外の大学に11名の地域枠を設定し、計20名を獲得する動きです。埼玉県もまずは今年度茨城県並みに20名を目指していかれたらいかがでしょうか。
そして、長期的な「戦略」として、埼玉県に医大を創出することです。
知事は、県立医大の設置についてイニシャルコストで700億円、ランニングコストで65億円程度の投資が必要という見解を示されました。確かにこれは高い買い物です。ただし、700万県民全員で10年間かけて負担したら、ひと月の県民一人あたりの負担は約90円です。また優良な納税者である医師を含め1,300名の雇用も確保できます。県立医大の設置を推進すべきと考えますがいかがでしょうか。
また、県立医科大学の設置が(制度の問題等で)難しいのであれば、代替案として現在医学部を持つ大学を誘致することや、新設の私立医大を含めた私大の誘致を検討することも考えられます。そういった、あらゆる可能性を捉えて、この医師不足解消を検討をしていただきたいのですが、知事のご見解をお伺いします。
 

上田知事の答弁
 今、菅原議員から医師不足の解消に向けた多くのご提案をいただきました。
 まず、「労働条件の緩和と同時に高度・専門的な医療の導入により医師の誘因を図れないか」のご提案ですが、全くそのとおりです。まさしく、質の高い医療を提供したり、多様な症例、そうしたものを学ぶことができる病院に医師は集まります。そして、通勤可能な便利なところにどうしても医師は集まる傾向にあります。ゆえに、よりローカルな所に医師が行かない。従って、自治医科大学ができて、一定程度の期間を強制的に地域に入るというような仕組みも出来上がったところです。今回の小児医療センターとさいたま赤十字病院のさいたま新都心への立地構想も、そうした優秀な医師の皆さんを集めるというのでしょうか、引き留める、あるいは新たに誘い込むという、言葉が適切かどうかは分かりませんが、そういう意味合いもないことはありません。このほか、小児科医や産科医への分娩手当に対する補助を行ったり、処遇改善をそれぞれ細かくやっているところですが、それでも、苦戦が続いているという、こういう状況でございますので、ご提案をさらに生かすようにしっかりと取り組んでいきたいと思っております。
 次に、大学医学部への地域枠の設定についてでありますが、県では平成22年度の5人から今年度は10人へと枠を拡大しています。ご提案の県外大学への地域枠の設定については、地域枠は既にすべての都道府県で設定されておりますので、大学の定員拡大そのものにも限界がありますから、今後新たに要請をしていくのは基本的には難しいのかなというふうに思っております。今後、県外の医学部に進学する本県出身の学生に対して手厚い奨学金などを与えることで引き留めるというような方法もあるのか、こんな研究もしなければいけないのかというふうに今考えているところです。

【すがわらの視点】
医療分野の政策は何と言っても国が動かないことには動きが取れないというのも事実です。しかし、だからと言って手をこまねいていては、県民の生命と財産を守る私たちの責任は果たせないと思っています。埼玉県は高齢者の増加率が全国一位でもあり、20年後の医療を想像すると、本当に心配になります。今、我々が死に物狂いで医療を充実させなければならない、という思いで医療の量と質の確保を考えていこうと思う。