7.老朽化マンション対策について

Q 菅原文仁議員(刷新の会)

マンションは、今や我が国における重要な居住形態であり、埼玉県においても、特に県南を中心に供給が進んでおります。例えば戸田市では、平成25年のマンション化率は民間調査で26.21パーセントであり、3.8世帯に一世帯はマンションに住んでいる状況です。県は、平成22年度に分譲マンション実態調査を行い、課題も認識され、今年度、老朽化した管理不全マンション適正化への支援事業に取り組むなど積極的な推進をしていただき、感謝を申し上げます。
また、今般改正マンション建替え円滑化法も可決され、マンション敷地売却制度が創設されるなど、耐震性不足のマンションの建替えが促進される道も広がりました。老朽化したマンションをスラム化させないためにも、埼玉県として着実にマンションの新陳代謝を促すべきと考えております。
一般的に老朽化したマンションは入居者も高齢化し、建替えのための資金確保が困難になっております。そういったマンションの建替資金を確保する場合、建替えにより床面積を増やすことで新たな住戸を販売し、その資金で建設資金に充てることが考えられます。ところが、昭和45年の建築基準法の改正で容積率制限が導入されたため、増床できる床面積には制限があります。さらに、45年以前に容積率制限を超えて建築されたマンションいわゆる既存不適格建築物では、増床はより困難です。これらの容積率制限がネックになって建替えが進まないマンションに対して、先進的にマンション政策を進める東京都は、共同住宅建替誘導型総合設計制度という独自の制度を創設して、容積率や高さの制限の緩和を行うことで建替えを促しています。
一方、マンション建替え円滑化法による建替えには、区分所有者などの合意が必要ですが、多様な価値観や複雑な権利関係など特有な性格を有しており、合意形成を図ることは容易ではありません。専門家による支援も必要ではないかと思います。
そこで、都市整備部長に質問です。
県は、このようなマンションの建替えの課題についてどのように認識し、把握しているのでしょうか。また、今後東京都のよう に独自に容積率や高さの緩和を行うなど、建替えを促す取組を検討してはいかがでしょうか。さらに、マンション管理士などの専門家と連携して、建替え等に向けた支援策は講じていかれるのでしょうか、御所見をお伺いします。

A 秋山幸男 都市整備部長

まず、マンションの建替えの課題についてでございます。
平成22年度に県が行ったマンション実態調査では、回答を頂いた3,278管理組合のうち、12%に当たる403の組合が建替えや改修に関心を持っていることが明らかになりました。
また、課題としては、資金の調達が45%で最も多く、次いで、建替え中の仮住居の確保、住民の合意形成を図る専門知識がないことなどが挙げられております。
そのため、まずは、こうした課題に取り組むことが重要と考えております。
次に、建替えを促す取組の検討でございますが、お話の総合設計制度は、本県でも県内の状況を踏まえた制度を定めております。具体的には、広場を確保するなど一定の条件を満たせば、それぞれの地域に定められた容積率に最大200パーセントまで上積みできるといったものです。
建替え資金を生み出すために、容積率を上積みすることは、マンション需要の高い地域では有効な手法であります。
しかし、今後、人口が減少し、高齢化が急速に進むことが見込まれる中では、マンション需要は、県南地域や駅前などの交通利便性の高い地域に限られてくると思われます。
また、容積率や高さを緩和することにより、日影や圧迫感といった周辺の住環境へ悪影響が生じるおそれもあります。 そこで、こうした課題を踏まえ、建替え促進を図るための現行総合設計制度の改善点について、市町村や都市計画の専門家などの意見も聞きながら検討してまいります。
次に、建替えなどに向けた支援策についてでございます。
建替えや改修に当たっては、先ほど申し上げました資金の調達や、住民の合意形成を図ることなどが重要であり、専門家からの支援が必要です。
そこで、県では、「埼玉県分譲マンションアドバイザー登録制度」を立ち上げ、この6月に登録の受付を始めたところです。
この制度は、資金調達などのアドバイスを望む管理組合に、信頼できるマンション管理士をアドバイザーとして、県のホームページを通じて紹介するものです。
また、平成26年度から、管理が不十分なため将来の建替え時に問題の起こりそうなマンションを支援する事業にも、このアドバイザーを活用してまいります。
県といたしましては、これらの取組を通じて、老朽化マンションの建替えや改修などが促進されるよう積極的に支援してまいります。